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『バジリスク』とは

『バジリスク』は、せがわまさきによる、甲賀と伊賀の忍者、総勢20名の忍術バトルを描いたアクション作品である。講談社から発行されていたヤングマガジンアッパーズにおいて、2003年から2004年にかけて連載。原作は山田風太郎の小説『甲賀忍法帖』である。

『バジリスク』のあらすじ・魅力

慶長19年4月、徳川家康は、忍者の集団である甲賀卍谷衆と伊賀鍔隠れ衆を戦わせ、どちらが勝つかで第3代徳川将軍を決めることにしました。長らく不戦状態にあった忍法の二大宗家はかつて敵対していたこともあり、互いの頭領は家康の命令にすすんで従います。戦いに参加する各々10名の忍者はいずれも曲者揃い。その参加者には、不戦状態のうちに祝言を挙げるはずであった、甲賀卍谷衆の弦之介、伊賀鍔隠れ衆の朧の名前も入っていたのです。

本作の魅力は、何と言っても忍者達が披露する忍法の数々。体を塩に溶かして液体化する忍法や、壁と一体化して相手を暗殺する忍法、果てには殺されても生き返るような忍法まで登場します。もはや異能と呼ぶべきその力でもって容赦無く相手に襲いかかるシーンの連続は、まさにバトル系漫画がもたらすエンターテイメントの極地と呼べるものです。

『バジリスク』の印象的なエピソード

1巻1話:繰り広げられる忍法対決と悲劇の予感

駿府城の敷地内、徳川家康をはじめとする江戸幕府の面々と、甲賀・伊賀の頭領が見守るなか、ふたりの忍者が戦っていました。甲賀の忍者の名は風待正監、伊賀の忍者の名は夜叉丸といいます。夜叉丸は女性の髪を用いて作り上げた特性の剛糸を操り、風待正監は体内で生成するニカワのような痰を武器に、相手を殺す勢いで襲いかかりました。魔人のような禍々しい忍法の凄まじさを目の当たりにした家康は、甲賀の頭領である甲賀弾正、そして伊賀の頭領であるお弦に対して、忍者衆を駿府城へ呼んだ本意を伝えます。その本意とは、徳川の世継ぎを決めるために命がけの忍法合戦をせよ、というものでした。徳川の跡継ぎをかけた代理戦争の開始は同時に、甲賀と伊賀のあいだに長らく続いていた不戦の約定が解かれた瞬間でもあったのです。

忍法合戦に際して、甲賀と伊賀は頭領を筆頭にそれぞれ10名の忍者を選出し、人別帖と呼ばれる巻物へ名前を記します。そこには甲賀弦之介と、そして「朧」という名前が。時を同じくして、駿府城から遠くに離れた地では、弦之介と朧が逢瀬を重ねていました。ふたりは不戦の約定のもとで、近々祝言を挙げる予定だったのです。互いに殺し合わなければならない運命が訪れたことを、弦之介も朧も、このときはまだ知る由もないのでした。

それぞれの頭首の命を受けて、風待正監と夜叉丸は衆の里へ今回の忍法合戦を知らせるべく、人別帖を持って帰ろうとその場を離れます。しかし、夜叉丸が持っていたはずの人別帖は、いつの間にか弾正がこっそり抜き取っていたのでした。そのまま弾正は油断していたお弦を毒針で仕留めます。しかし、お弦が放っていた鷹に翻弄された弾正は、渾身の力を振り絞って立ち上がったお弦に刺し殺されるのでした。お弦は弾正から人別帖を取り返すと、自分の鷹にそれを持たせ、伊賀の里へ飛ばします。そして、今回の忍法合戦にどこかもやもやした胸のうちを抱えながら、お弦もまた絶命するのでした。死の直前、ふたりの脳裏には若い頃の自分達が手を取り合う姿が。弾正とお弦もまた、かつては恋仲であったのです。

本エピソードでは早速、本作の最大の魅力である忍法の禍々しさが披露されることに。美男子である夜叉丸の糸を使った攻撃はバトルシーンとして映えるものの、風待正監の攻撃に自らの髪を切り刻むことになるなど、決して格好よく描かれるわけではありません。一方、手足を蜘蛛の脚のように操り、粘着力の高い痰で相手を絡め取る風待正監の異形めいた姿は、本作が奇怪な異能バトルものであることを強く印象づけます。

また、弦之介と朧、弾正とお弦の対比にも注目です。弦之介と朧の関係は、まさにかつての弾正とお弦の姿そのものあることがうかがえます。しかし、不戦の約定があったとはいえ、弾正とお弦はついにその想いを遂げることはできませんでした。そして、時を経て不戦の約定が解かれ、弦之介と朧は互いに殺し合わなければならない状況に陥ります。それは弾正とお弦のように、ふたりの恋もまた、悲しい結末を辿るのではないかということを読者に予感させるのです。

1巻4話:チーム戦による忍法合戦の開幕

お弦の放った鷹が持っていた人別帖は、伊賀の小豆蠟斎と甲賀の鵜殿丈助による鍔迫り合いを経て、朧を迎えにきた伊賀の忍者達のもとに渡ります。忍者の名は朱絹、蓑念鬼、蛍火、雨夜陣五郎、筑摩小四郎、そして伊賀で高い地位を持つ、薬師寺天膳。人別帖から今回の忍法合戦についての一切合切を理解した彼らは、朱絹を朧に同行させると、甲賀に対してアドバンテージをとるための作戦を立てます。その手始めとして、まず残りの者達で風待正監から人別帖を奪おうと画策するのです。

風待正監を追う彼らの前には、一台の駕籠が走っていました。その駕籠が甲賀の忍者である地虫十兵衛のものであると気がついた天膳は、彼を駕籠から引きずり出します。出てきた地虫十兵衛の姿は、四肢を持たず、まるで蓑虫のような出で立ち。その姿に油断したのか、天膳はほかの者達を風待正監の追跡に向かわせ、地虫十兵衛から甲賀の忍者達が有する忍法の詳細を聞き出そうとします。しかし、地虫十兵衛はその長い舌と喉に隠した槍を暗器のようにふるい、一瞬のうちに天膳を刺し殺すのでした。

一方、風待正監に追いついた伊賀の忍者達が彼を取り囲みます。風待正監は、そのニカワのような痰をまるで蜘蛛の糸のように広げて、伊賀の忍者達を絡め取りました。しかし、間一髪その痰を逃れた蛍火の蝶によって幻惑された風待正監は、体毛を手足のように操ることができる蓑念鬼によって惨殺されることに。死の直前、風待正監は人別帖を彼方へ放り投げます。その先には天膳を倒し、腹に仕込んだ蛇腹で高速移動してきた地虫十兵衛の姿がありました。彼は人別帳を持って風待正監のあとを引き継ぎます。しかし、地虫十兵衛の先には、なんと仕留めたはずの天膳の姿が。暗器の正体を見抜かれた地虫十兵衛は為す術もなく、天膳に切り伏せられます。二つの人別帖を手にした天膳は、甲賀の人別帖を燃やしてしまうのでした。

わずかな間に伊賀の忍者がそろい踏みするだけではなく、その忍法の一部が贅沢に明かされるのが本エピソード最大の特徴です。蛍火の虫を利用した幻惑や、蓑念鬼の体毛を操る能力、そして地虫十兵衛の異形めいた姿からは、いまだ登場していない忍者も独特の忍法を有していると気づかされることに。ほかの忍者達がどのような忍法を持っているのか、期待が高まることでしょう。また、死んだはずの天膳がなぜ姿を現すことができたのかという謎は明かされないまま、物語は進行することになります。彼のその秘密は、およそ人間の体に起こりえるかもしれないものとして、徐々に明らかになるのです。

なお、このエピソードではパワーバランスの急激な変化についても注目です。まだ人別帖が手元に渡らないうちに、既に甲賀の忍者は頭領を含めて3名も死んでいます。一方、伊賀の被害は頭領のお弦のみ。数で勝る伊賀に対して、甲賀は一気に劣勢に立たされます。しかも弦之介はお供の鵜殿丈助を連れて、朧とともに伊賀の里へ向かっている状況です。いまだ明らかになっていない甲賀の忍者達がどのようにしてこの状況を巻き返すのか、期待が膨らみます。

さらに、忍法バトルによるシーンが目白押しのなかで、それぞれのキャラクターの性格や設定をきちんと押さえている点も見逃せません。たとえば、地虫十兵衛はその異形めいた姿がなんとも読者の目を惹くキャラクターです。しかし、作中では彼が星占いに優れているという様子をうかがうことができます。天膳を刺し殺すシーンと併せて、地虫十兵衛が頭のまわる、冷静な人物であることがわかるでしょう。また、蛍火においては彼女が夜叉丸を心配する様子が描かれるとともに、夜叉丸の行方を答えない死にかけの風待正監を何度も刺すシーンが入ります。実は蛍火と夜叉丸は恋仲なのです。忍法バトルによる忍者達の無情な死が描かれる本作において、その魅力を一層押し上げているのは、こうした登場人物のさりげない設定の披露にあるのがわかります。

2巻13話:弦之介の能力が明らかに

天膳達の襲来によって甚大な被害を受けた甲賀の里では、霞刑部、如月左衛門、陽炎、そして参謀役の室賀豹馬による話し合いが行われていました。話し合いの内容は、どのようにして伊賀の里にいる弦之介の様子を確かめに行くか、というもの。既に如月左衛門は妹のお胡夷を伊賀へ向かわせていました。しかし、彼女は天膳に捕らえられてしまっていたのです。天膳達の様子から、豹馬は甲賀と伊賀の間における不戦の約定が解かれたのではないかと推察します。その真相を確かめるべく、霞刑部と如月左衛門を伊賀へ向かわせるのでした。道中、人別帖を失ったまま伊賀へ向かう夜叉丸を発見したふたりは、彼と相対し、これを撃破します。夜叉丸から人別帖の情報を知った如月左衛門は、姿形を夜叉丸そっくりに化け、伊賀へ侵入しました。

一方、伊賀に捕らえられたお胡夷は、体の触れた部分から相手の血を蛭のように吸い取る能力で、彼女を尋問しにきた小豆蠟斎を殺し、次いで雨夜陣五郎を退けます。しかし、さらにやってきた蓑念鬼に対して、その剛毛に守られた肌に触れることができず、彼女は返り討ちにあいました。夜叉丸の姿のまま駆けつけた如月左衛門に対して、お胡夷は最後の力を振り絞って、人別帖のありかを伝えます。悲しむ間もなく、如月左衛門は無事に人別帖を入手しました。しかし、その場で出くわした朧と目を合わせると、彼は元の姿に戻ってしまいます。朧の目には、相手の忍術を解除する能力があったのです。からくもその場を逃れた如月弦之介は、霞刑部とともに人別帖を弦之介へ渡すのでした。

人別帖の内容から忍法合戦の全容を理解した弦之介は、霞刑部と如月左衛門を連れて甲賀の里へ帰ろうとします。弦之介へ襲いかかる伊賀の下端の忍者衆達は、弦之介が目を見開いた瞬間、一斉に自害していきました。弦之介の目は、朧と同じく異能の力を持っており、自分に害意を向けて攻撃してきた相手を自滅させることができるのです。弦之介を倒せる可能性があるのは、遠距離からかまいたちで攻撃できる小四郎のみ。しかし、かまいたちを発生させた小四郎は止めに入った朧の目から逃れようとして、そのまま弦之介の目を見てしまい、かまいたちを自分の顔にぶつけてしまいます。去っていく弦之介を、朧は止めることができません。弦之介を殺すことを望まず、また自分の目が伊賀の災いになると知った朧は、秘薬でもって自分の視力を7日間も封じてしまうのです。

このエピソードでは、主人公のひとりである弦之介の能力がついに明らかになります。自分に害意を向けた相手を自害させようとする能力は、作中でも非常に強力な忍法のひとつであり、その強さはあの天膳さえも狼狽させるほどです。瞳術と呼ばれるその能力については朧も違った効果のものを有しており、ふたりの共通性がうかがえます。そして、弦之介の強力な忍法が披露されたことによって、甲賀と伊賀のパワーバランスは均衡することに。数で勝っている伊賀の優位は崩れ、さらにはあらゆる忍法を封じる朧の視力が失われたことで、勝敗の行方はわからなくなっていきます。

4巻24話:暗闇の死闘

忍法合戦を継続することを好まない弦之介は、あえて伊賀に果たし状を送りつけるとともに、徳川家康と、合戦の監督を務める服部半蔵へ真意を問うべく、駿府へ向かいます。霞刑部を失った彼らに対して、天膳は小四郎が操る鷹を利用して襲撃します。如月左衛門と陽炎を引き離し、目の見えない弦之介と豹馬を前にして余裕の天膳。しかし豹魔の目が見開いた瞬間、天膳は自害してしまいます。夜の間だけ開くことのできる豹魔の目もまた、弦之介と同じ能力を持っているのでした。戻ってきた如月左衛門は、天膳の死体を川辺まで運ぶと、その顔を利用して天膳に化けます。

弦之介の瞳術で受けた傷のせいで、目が見えない小四郎。天膳が戻ってこないことを不審に思った小四郎は、鷹の様子を通じて弦之介達の存在を感知します。鷹を使って相手の位置を把握する小四郎のかまいたちに、弦之介達は手も足も出ません。豹魔は弦之介と陽炎を逃がすと、ひとり小四郎に立ち向かいます。生来より目の見えない豹馬と、視覚を潰された小四郎。しかし、豹魔の瞳術は目の見えない今の小四郎には通じません。音だけを頼りに戦いを繰り広げる両者。死闘の末に片耳をやられた豹魔は、小四郎が投げた鎌に惑わされた結果、かまいたちの直撃を受けて立ったまま死亡します。

残された小四郎の名を呼ぶ、朱絹の声が聞こえます。彼女は朧とともに宿で待っているはずでした。朱絹は、宿におしかけた如月左衛門によって朧が討たれたと告げ、そして自分はからくも逃げ出してきたといいます。朧に対して絶対の忠義を持っていた小四郎は大きく動揺しました。そして、朧を失った伊賀はもう戦う意味がないと告げる朱絹は、小四郎とふたりでどこか遠くへ逃げようと提案し、そのまま小四郎を抱きしめます。これまで目が見えない自分の世話をしてくれた朱絹にほだされていく小四郎もまた、朱絹を抱きしめました。そうして彼は、いつの間にか息を引き取ってしまいます。実は、朱絹の声は如月左衛門によるものであり、小四郎を抱きしめていたのは吐息に猛毒を含んだ陽炎だったのです。

この話では、目が見えないことによるエピソードが絡み合って機能しています。弦之介は少し前に伊賀の忍者によって視界を封じられていました。そして豹馬は生来より目が見えません。豹馬の能力を知らない天膳は目が見えないふたりを前にして余裕の表情を浮かべますが、弦之介と同じ瞳術を持つ豹馬によって討たれます。最強の能力を持つ忍者がふたりもいる甲賀勢。しかし、弦之介によって目を潰された小四郎には、彼らの最強の瞳術も通用しません。それどころか、鷹を利用して目が見えない不利を補う小四郎は、これまでと何ら変わることのない様子で甲賀勢に襲いかかるのです。絶対的な能力を持つ者が必ず勝つわけではないという、バトル漫画の面白さをうまく表現している一幕だと言えるでしょう。

また、このエピソードでは朱絹と小四郎の関係にも注目です。弦之介によって目をやられた小四郎は、視界が閉ざされた恐怖のなかで、朧や天膳への忠義だけを胸に生きています。しかし、その天膳は頭領であるお弦がいなくなったのをよいことに、朧を無理やり妻にしようとしていました。天膳の狼藉を知った小四郎の忠義は揺れに揺れます。その小四郎を甲斐甲斐しく世話してきたのは、朱絹でした。これまでの朱絹の様子からは、小四郎への思慕の情がうかがえます。如月左衛門と陽炎の策略に嵌まってしまったとはいえ、最後に小四郎が忠義を捨てて朱絹を抱きしめた様子からは、彼もまた朱絹を少なからず想っていたことがわかるでしょう。

ちなみに、天膳の死亡はこのエピソードで既に3回目です。非常に強力な不死の能力のおかげで、作中でも屈指の強さを誇る天膳。しかし、その死亡シーンのほとんどは彼の油断によるものだということがわかります。そして、その強力な能力を持つがゆえに、次はどのあたりで生き返るのかというお決まりの法則を作り上げることになるのです。漫才にも似たこの法則に気がついてしまうと、悪辣非道で好色めいた天膳のキャラクターのなかに、どこか笑いを誘うものを見てしまうことになります。

5巻(最終巻)33話:天膳、ついに死す

天膳に化けた如月左衛門は宿から朱絹をおびき出すことに成功し、陽炎とともに彼女を討ちます。しかし、天膳の不死の能力を知らない如月左衛門もまた、復活した天膳自身によって返り討ちに遭うのでした。残された陽炎は目の前に現れた天膳が如月左衛門であると気がついていません。しかし、彼女へ狼藉をはたらこうとする姿から、目の前の男が如月左衛門ではなく天膳であると気がついた陽炎。彼女は決死の覚悟で天膳と交わり、彼の息の根を止めます。しかし、殺しても決して死なない天膳によって、陽炎は弦之介をおびき出すための囮に使われるのでした。河原の掲示から、陽炎が捕らえられたことを知った弦之介は、ひとり天膳のもとへ向かいます。

無住の荒寺で陽炎への拷問を続ける天膳に対して、もうやめてくれと朧は懇願しました。その願いを一顧だにせず、ふたたび彼女を自分の妻になるよう迫る天膳の前に、弦之介が現れます。目の見えない弦之介ひとりに対して余裕の表情を見せる天膳は、脆くなった床で足を踏み外した結果、弦之介の太刀によって首をはねられるのでした。お互いに目が見えない弦之介と朧。朧が争いを避けるために自らその目を封じたと知った弦之介には、朧を殺めることができません。そんな弦之介の姿を見たくない陽炎は、朧を殺せないならいっそ共に死のうと、弦之介を自ら毒殺しようとします。それは、ちょうど朧が目を封じてから7日が経過した瞬間でもあったのです。朧の目を見てしまった陽炎は自身の毒を無力化され、拷問の傷もあって息を引き取るのでした。

毒にあてられたものの、まだ弦之介が生きていることに気がついた朧は、彼を寺の影に隠します。彼女のもとに、伊賀の忍者を支援する阿福と、江戸の侍達が集まりだしました。天膳の不死の能力を知っている阿福は、侍達に天膳の首をつなげるよう命じます。首をつながれた天膳の喉元には、なんともうひとりの人間の影がありました。首のあたりから口が開き、異形の姿で再生しはじめる天膳と、それを必死の形相で睨み付ける朧。やがて不死の能力を無効化された天膳は、最後に弦之介が寺の影で生きていることを絶叫しながら、完全に死亡するのでした。甲賀と伊賀の血みどろの戦いは、ついに弦之介と朧を残すだけとなります。

天膳の不死の能力は、最終回の直前であるこのエピソードによって、ついにその全貌が明らかになりました。その正体とは、本来であれば天膳と一緒に生まれてくるはずだった赤子が、彼の身に巣くったことによるもの。天膳自身が死亡しても、彼のなかにある赤子が生きている限り、赤子は天膳の体を修復してしまうのです。ここまでくると荒唐無稽に過ぎると思われる一方で、どこか妙な説得力があると感じる人もいるのではないでしょうか。なお、天膳の不死の設定については、原作である『甲賀忍法帖』とも大きく異なります。興味がある人は一度読んで見るのもよいでしょう。

『バジリスク』の登場人物

甲賀弦之介

甲賀卍谷衆の頭領である甲賀弾正の孫。自分に敵意を向けて襲ってくる相手の目を見ることで、その相手を自害させる瞳術を使う。伊賀鍔隠れ衆の朧とは恋仲である。争いを好まない穏やかな性格をしている一方で、冷静に相手を分析し、ときには非常な判断を下す一面を持っている。

甲賀弾正

甲賀卍谷衆の頭領。毒を仕込んだ針を使って相手を倒すのを得意とする。夜叉丸から早々に人別帖をかすめ取るものの、その場にいたお弦と刺し違えることになる。かつてお弦とは恋仲であった。

風待将監

ニカワのような粘着力のある痰を蜘蛛の糸のように飛ばして相手を絡め取り、始末する戦法を得意とする。外見もまた蜘蛛を思わせるような体型をしており、長い手足を四本の脚のようにして動き回る。

鵜殿丈助

丸々と太った外見とは裏腹に、まるでゴムボールのように飛び跳ね、素早い動きで相手を翻弄する。その体は柔軟性に富んでおり、刃を突き立てるのも難しい。明るいひょうきん者である一方、女性を見るとすぐに手を出してしまう一面も。

地虫十兵衛

四肢を持たない忍者で、星占いを得意としている。普段は専用の駕籠に乗って移動する。しかし、緊急時には腹に仕込んだ蛇腹のような道具によって自ら移動することも可能であり、その速さは並の忍者では追いつけない。喉に仕込んだ暗器を武器としており、長い舌を鞭のように使って不意打ちを行うのが得意。

室賀豹馬

甲賀卍谷衆での上役。姉は弦之介の母親であり、豹馬は弦之介の叔父にあたる。生来より目が見えない。そのぶん、聴覚が異常に発達しており、遠くに離れた音の方向を判断できるだけではなく、音から殺気の有無すら判断できるほど。弦之介にとっては瞳術の師匠でもあり、夜の間だけ彼と同じ術を使用することができる。

霞刑部

筋骨隆々な体格を持つ忍者。まるで透明人間のようにして壁や水たまりに一体化し、相手の死角から襲いかかる戦法を得意とする。素手で相手を絞め殺すことができるほど、徒手空拳での戦闘にも優れている。血気盛んな性格で、豹馬に窘められることも多い。

如月左衛門

泥を使って相手の顔の型をとり、自分の顔としてしまう能力を持っている。声帯模写にも優れており、男性だけではなく女性の声を出すことも可能。その変化を見破ることは、たとえ懇意にしている相手であっても容易ではない。甲賀卍谷衆の忍者のなかでも温厚な性格をしているせいか、時には相手への慈悲めいた感情を見せることも。

陽炎

数少ない女忍者のひとり。男と交わり体が高ぶるときに発せられる吐息が猛毒となり、相手を仕留める。甲賀卍谷衆でも高い家柄を出自に持つ。弦之介を恋い慕っているものの、その体質から結ばれることを半ば諦めている。

お胡夷

如月左衛門の妹。健康的な肉体とは裏腹に、その肌は蛭のように吸い付き、触れた部分から相手の血を抜き取る性質を持っている。まだ幼く天真爛漫な性格である一方、作中では相手の不審さを見抜く洞察力をもっていることがうかがえる。

伊賀鍔隠れ衆の頭領であるお弦の孫。忍法の類いを使うことができず、また常人離れした運動神経を持ち合わせているわけでもない。しかし、生まれつき相手の忍法や能力をたちまち無効化する特殊な目を持っている。忍者のような冷酷さは微塵も持たず、甲賀の忍者の死に際にも慈悲深い様子を見せる。何もないところでつまずくなど、おっちょこちょいな一面も。弦之介とは恋仲である。

お弦

伊賀鍔隠れ衆の頭領。鷹を自在に操る能力を持っている。また、弾正の毒針に刺されても立ち上がるなど、老齢ながら常人離れした運動神経を誇る。かつて弾正とは恋仲であったこともあり、忍法合戦によって弦之介との仲が裂かれる朧のことを不憫に思っている。

小豆蠟斎

老齢の忍者。手足を三節棍のように操り、年齢にそぐわない怪力で相手を仕留める。不戦の約定に関しては快く思っていないようであり、これが解かれたことを知った際には喜びを見せている。しゃっくりが止まらない朧を脅かしてこれを止めようとするなど、朧に対してはおちゃめな性格を見せることも。

朱絹

女忍者のひとりで、朧の身の回りの世話を任されている。体から血液を放出することができる特異体質の持ち主であり、血で相手の視界を封じて倒す戦法を得意とする。弦之介の瞳術で目を潰された小四郎の世話をするうちに、彼に惹かれていく。

蓑念鬼

全身毛むくじゃらの忍者。体毛を硬化させて手足のように操るだけではなく、針のように用いて相手を刺すこともできる。猪突猛進な性格で相手の力量を分析できていないことが多く、弦之介の瞳術にひるんだ天膳を見た際にはこれを軽んじている様子がうかがえる。

夜叉丸

長髪の美男子。女の黒髪を利用して作った糸を使って相手を攻撃する。その糸は刃物よりも鋭く、並の岩程度であれば容易に切り裂くことが可能。冒頭、風待正監との試合の際に体に絡みついた痰を取り除くために、自らの髪を犠牲にしてこれを断ち切り、以後は短髪になる。蛍火とは恋人同士である。

蛍火

女忍者のひとり。蝶を自在に操り、相手を翻弄する忍法を得意とする。また、体に白い蛇を巻き付けている。普段は素直そうな性格をしているものの、夜叉丸のことが関係すると感情を抑えきれなくなることが多く、時に残虐な行為に走ることも。夜叉丸とは恋仲である。

雨夜陣五郎

自分の体を塩に溶かして液状化し、体を小さくできる特殊な体質を持っている。また、液状化した状態で、相手の体内に侵入することもできる。水に浸かると元に戻ることが可能。その体質のせいで、海を極端に怖がっている。

薬師寺天膳

伊賀鍔隠れ衆でも非常に高い地位を持つ忍者。外見は20歳~30歳くらいであるものの、本人いわく既に180年は生きているとされる。殺しても死なない能力を持っており、この能力で相手の忍法を一度確認してから仕留める戦法を得意とする。また、その能力を過信しているせいか油断が多く、初手で殺されることもしばしば。

筑摩小四郎

甲賀からは天膳の腰巾着と呼ばれる、まだ若い忍者。両手に持った鎌を自在に操るとともに、口で特殊な空気の流れを作り、触れた相手を切り刻むかまいたちを発生させることができる。朧や天膳に絶対の忠誠を誓っている。

『バジリスク』の世界

駿府城

徳川家康の居城であり、現在の静岡県静岡市に存在していた。駿府はかつて今川氏の領国であり、幼い徳川家康はこの地で今川氏の人質となっていた時期がある。その後、戦国時代での合戦における領主の交代を経て、家康がこの地を引き継いだ。江戸幕府を開いた家康は隠居後、駿府に戻り、駿府城で暮らしている。物語の冒頭、甲賀と伊賀の忍者対決が開かれた場所であるとともに、中盤以降、弦之介達は忍法合戦の真意を確かめるために、この地を目指して移動することになる。

大御所

江戸時代、征夷大将軍を退いて隠居した者に対する敬称。古くは親王に対する敬称や、摂政関白の父親に対する敬称として用いられていた。今日では引退した大物の政治家や、ある道における大家を指すことが多い。作中では弦之介をはじめとする忍者が徳川家康のことを敬ってこのように呼ぶ。

不戦の約定

甲賀卍谷衆と伊賀鍔隠れ衆における合戦を禁じた約定のこと。この約定により、甲賀と伊賀の忍者同士で争いを行うことは許されていない。しかし、両衆が必ずしも協力的であるわけではなく、約定さえ解かれてしまえばすぐにでも争いに転じるだろうと考えている忍者は多い。本来、弦之介と朧は約定の延長線上で祝言を挙げるはずであり、これにより甲賀と伊賀の和睦が期待されていた。

服部家

徳川幕府お抱えの忍軍のこと。頭首は徳川忍組の組頭でもある服部半蔵が務める。作中での頭首は四代目にあたる。今回の忍法合戦の行司役も担っている。なお、頭首の服部半蔵ですら、甲賀と伊賀の忍法合戦を目の当たりにした際には驚愕を隠しきれず、作中では彼らを魔人と称している様子が確認できる。このことから、服部家と甲賀・伊賀の忍法にはかなりの差があるのではないかと推察される。

甲賀卍谷衆

甲賀卍谷を拠点とする忍者集団のこと。甲賀忍軍がモチーフになっていると思われること、及び3巻14話での東海道の地図のイメージから、甲賀卍谷の場所は現在の滋賀県甲賀市あたりだと推察できる。頭首は甲賀弾正。

伊賀鍔隠れ衆

伊賀の鍔隠れ谷を拠点とする忍者集団のこと。拠点は現在の滋賀県伊賀市あたりだと推察される。実際、作中では山ひとつを越えて弦之介と朧が逢い引きしている様子があり、両衆の里はさほど離れていないことがわかる。頭首はお弦。

人別帖

物語の中核である忍法合戦の要となる巻物のこと。巻物は2本あり、甲賀、伊賀から選出した忍者各10名ずつ、合計20名の名前が両方の巻物に記載されている。記載されている忍者が命を落とすと、その名前を血で塗りつぶす。この人別帖を持って駿府城へ行き、最後に生き残った者が勝者となる。なお、人別帖には本合戦が徳川家の世継ぎを決定するという真意は記されていない。また、冒頭で徳川家康から合戦の真意を聞かされている弾正、お弦、風待正監、夜叉丸はいずれもその真意を伝えることなく死亡している。このため、忍法合戦に参加している者達が合戦の真意を知るのは物語の終盤に入ってからとなる。

破幻の瞳

朧が持つ瞳の力を指してこのように呼ぶ。後天的に身につける忍法とは異なり、朧が生まれたときから宿している能力である。特に意識して能力を使用している描写はほとんどなく、ただ見るだけで相手の忍法や能力を解除してしまう。いわば常に能力が発動している状態である。作中では雨夜陣五郎の液状化、如月左衛門の変化の術、陽炎の毒の息を無効化するなど、敵味方に限らず使用されることに。また、弦之介と相対する筑摩小四郎の視線をその目でそらしてしまったことで、結果として彼に深手を負わせてしまっている。

七夜盲の秘薬

伊賀鍔隠れ衆に伝わる秘薬。瞼の上から塗ることで、その目は7日間開かれなくなる。作中では自分の瞳が伊賀の忍者達へ災いを起こしてしまう恐怖、そして弦之介との争いを避けることを理由に、朧が自らの瞼に使用。破幻の瞳の能力を封じることになる。また、蓑念鬼と蛍火の奇襲によって、同じ薬を弦之介に用いることに成功し、彼もまた瞳術を封じられることになった。

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