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『シュトヘル』とは
『シュトヘル』は伊藤悠によるヒストリカルロマン漫画。2009年(平成21年)から2017(平成29年)にかけて『ビッグコミックスピリッツ』および『月刊!スピリッツ』(小学館)誌上に連載された。単行本は全14巻がビッグスピリッツコミックススペシャル(小学館)より刊行されている。
『シュトヘル 』1巻のあらすじ・見どころ
蒙古と西夏が争う13世紀初頭。西夏軍にウィソ(すずめ)と呼ばれる女兵士がいました。何をしても落ちこぼれな一兵士でしかなかった彼女ですが、仲間の死と数々の死線を潜り抜けて人間を超越した強さを誇る悪霊(シュトヘル)として蒙古軍を恐れられることとなります。
一方蒙古側では、ツォグ族の幼き皇子・ユルールが敵方である西夏の文字に魅了され、そして自軍の侵略によりその国にある本や経典がすべて焼き尽くされる未来を憂いていました。彼は相棒の鷹・ヤラルトゥと老人・ボルドゥと共に文字盤を運ぶ旅に出ます。シュトヘルとユルールはやがて出会い共に旅をすることとなりますが…。
現代日本の男子高校生・須藤はかつてシュトヘルが体験した戦場の見続けていました。そんな彼とカラオケで出会った転校生の女子・スズキとの邂逅によって意識は800年前へ飛び、シュトヘルとして蘇生することとなります。記憶がない(シュトヘルの身体に入った須藤が状況について行けてない)状態のシュトヘルと再会したユルール達によって、これまでに何があったのかが語られます。『敵は、俺の一族だ。さあ、長い話をはじめよう。』
『シュトヘル』2巻のあらすじ・見どころ
『わたしは、きさまらに憑いた悪霊だ。』蒙古(モンゴル)による西夏侵略の中で戦友たちをむごたらしく殺され、復讐の鬼となってモンゴル兵を襲う悪霊(シュトヘル)。一度は刑死したシュトヘルの体に、何の知識もないまま蘇ってしまった現代日本の高校生・須藤は、味方と名乗るユルールとボルドゥの二人から、これまでの経緯について聞くことになります。
西夏文字の字典・玉音同を守るため、ツォグ族を離れた族長の子・ユルール(実はモンゴルの大ハンの子)とボルドゥは、「敗者の歴史や文学を滅ぼさない」という宋国・成都へ向かっていました。塩州で出会った隊商長・アルファルドとともに旅立つ二人。しかしその一方、シュトヘルに対して異常なまでの執着心を抱くアルファルドによって、ユルールがシュトヘルの仇である「虎の男」の関係者であるという情報が流されていました。
『虎の絵の男を知っているか。』隊商を襲撃し、そう詰め寄るシュトヘルに、ユルールは『…その虎は、おれの兄だ。』と打ち明けます。「虎の男」を追うシュトヘルと、「虎の男」である兄・ハラバルから追われるユルール。こうして、ハラバルを引き寄せるための生き餌であるユルールとシュトヘルの、奇妙な協力関係が成立します。しかし、一行の旅には多くの苦難が待ち受けていて…。
『おれは強くならなくちゃだめだ。自分を守ることができて――ひとに、つらい選択をさせないくらい』
『シュトヘル 』3巻のあらすじ・見どころ
アルファルドの毒により死に瀕するユルール、己を睨みつけるシュトヘルに対して、アルファルドは怨敵である虎の男を決着をつけるように諭すと、近くの宿駅へと去っていってしまいます。
シュトヘルがその言葉に従わずアルファルドを追って宿駅へと向かうと、そこで虎の男と遭遇、戦いとなるも敢え無く敗北してしまいます。
意識を失う間際、ユルールを救うための薬を虎の男へと渡し、『ユルールを殺さないでくれ』と懇願しました。
虎に男に捕らえられたシュトヘルは、そのまま処刑が執行されます。そこへ薬によって一命を取り留めたユルールが現れ、シュトヘルの救出を行おうとするも失敗。逃亡し、シュトヘルの遺体を弔う決心をした所で場面は二巻の冒頭、記憶を失ったシュトヘルに対して、ユルールがそれまでの事を話していた場面に戻り、玉音同を守るための旅を続ける事になりました。
一方、番大学院では今まさに西夏の文字を焼くための戦闘が行われています。
大ハンの命を受け大学院ごと全てを焼き尽くそうとするハラバル。
しかし、そのハラバルの前に大ハンからの新たな命令を持った異国人の使者が現れ、告げました。
全ての物を焼き尽くす前に、西夏の文字を記した玉音同を探せ、と……いった所で四巻へと続きます。
『シュトヘル』の登場人物
シュトヘル
主人公の一人。元々はウィソ(すずめ)と呼ばれた赤毛の女兵士であった。落ちこぼれで、いつも他の仲間に庇ってもらってばかりだったが蒙古軍との闘いで殿を申し出、結果的に運良くただ一人生き残ることとなる。仲間たちの死肉を食らう狼たちとの死線を繰り広げたことにより、たった一人で武装した蒙古軍の兵士複数人を相手どれる、超人的で獣じみた強さを手に入れた。仲間たちの仇をとるために虎の絵の男探し、蒙古軍からは悪霊(シュトヘル)として恐れられている。
ユルール
主人公の一人。蒙古側、ツォグ族の皇子であり年齢は10。本や経典を読むことや楽器の演奏を好む優しい性格のため、血気盛んな周囲からは浮いている。一方でその幼さゆえの考えの足らなさや無鉄砲さも備えている。記した人が死に後の世になっても託された想いを存在し続ける事の出来る文字に憧れ、大事にしている。しかし母親の故郷であり西夏国の首都・興慶を蒙古軍が焼き払うことで、本や経典が焼き尽くされることを憂いて相棒の鷹・ヤラルトゥと老人・ボルドゥと共に出奔。母親の遺した玉版9枚に刻まれた玉音同の文字盤を運ぶ旅に出る。
ハラバル
シュトヘルにとって仲間の仇である虎の絵の男。ユルールの兄にあたる。父親の後に続いて武勲を挙げて行く猛々しい武人であり、わざと退路を用意して逃げてきた西夏軍の兵士たちを袋叩きにする知略も見せる。母親の国である西夏を攻撃することになっても動じる気配がないが、浮いた存在で一人でいる弟を気遣ったり戦に加担することを寧ろ良しとしない。性根の優しいユルールを一族に与えられた祝福として大事にしている。
アルファルド
ユルールとボルドゥが塩州で出会った男。アルファルドという名前は「ひとり星」を意味する。隊商を率いている中東系の商人で、『他の者のやらぬ仕事もやる』というのがモットー。その一方で、憎悪のままにモンゴル兵を襲い、殺戮を繰り返すシュトヘルの姿に美しさを見出し、異常なまでに執着している。
成都へ向かう隊商が他になかったためにユルール一行はアルファルドを頼るが、アルファルドは自らの執着心からユルールの存在をシュトヘルに教えてしまう。隊商を襲撃し、ユルールが仇である「虎の男」ハラバルの弟であると知ったシュトヘルに、アルファルドは協力関係を提案する。しかしそれも、彼自身の歪んだ欲望を満たすために過ぎなかった。
ベクテル
塩州に駐留し、製塩や塩取引の権利を握っているモンゴル軍の将軍。物静かな男であり、戦にも興味がないように見える一方で、戦に出れば恐ろしいほどの戦果を上げると評されている。その実、より遠くの敵、多くの敵を殺すには視覚・聴覚をより鋭敏にすることが必要だと自らの鼻を削ぎ落とす(嗅覚を捨てる)など、異常な性格の持ち主でもある。
塩田の町の親子
ベクテルの支配下にある塩田の町で、モンゴル兵に対して酒を振る舞っている男とその息子。妻はモンゴル兵に攫われたが、戦に出ることもなく命をながらえた。父親は息子のため『ベクテルの足の裏をなめてだって生きるつもりだよ』と口にする。親子とのやりとりの中で、ひとの温かさに触れたユルールだったが…。
ヴェロニカ
大ハンに仕える金髪碧眼の異人。大ハンからの直接の命令を受け取ってハラバルの前に現れた美形の女性。故郷を滅ぼす為、大ハンに仕えている。
本編内では大ハンの夜伽を勤める情景も描写されており、大ハン直属の密使である他、愛人の様な立場をも併せ持った。
大ハンの秘密を知る者の一人であり、加えて医学の心得を持つため、大ハンの背中の治療を任されている。
元々は西方で修道女として神に仕えていたが、異教徒から医術の知識を得ていたことが原因で、魔女狩りの際に魔女の疑いをかけられ、悪魔祓いと称される拷問を受けた。
背中にはその際に異端者の烙印が焼き付けられており、これが為、大ハン以外には決して背中を見せようとはしない。
予言者
現在の大ハンであるテムジンの未来を予言したシャーマン。本編では名前は出ていない。
若き日のテムジンの前に現れ、『大いなるハンとなるお方』と告げた後、服従を誓った。
その際、予言者をペテン師だと思ったテムジンに両腕を茹で上げらながらも前言を撤回しなかった事から、テムジンにその根性を認められた。
現在ではモンゴルの虜囚の身ではあるものの、以前と変わらぬ忠誠を誓っており、テムジンのそばに仕え、シュトヘルの危険性を幾度となく警告している。
ベクテル
兜と布で顔を覆い隠した、モンゴル族将軍麾下の精鋭騎兵。大ハンの命を受け、ハラバル個人の指揮下に入った。
『シュトヘル』の世界
西夏
現在で言う中国西北部に建国された。歴史ではモンゴル帝国のチンギスハンによって滅亡することとなり、それは本作でも変わらない。戦火で燃やし尽くされる西夏の文字を巡って織りなされるのが、この漫画の物語である。
蒙古
モンゴルの中国語読み。物語では敵側であるものの、実際の歴史では勝者側にある。
ツォグ族
ユルールやハラバルの一族。蒙古軍に敗北したことにより服従を余儀なくされ、彼らの母親の故郷・西夏の殲滅に加担することとなる。
宋国
現在の中国にあたる国。(これは中国の王朝のほとんどに言えることだが)宋国では、滅ぼした王朝の歴史や文化をいたずらに葬り去ることなく、書き継いで次代へと伝えていくとされる。そこに西夏文字の生き残る道を見出したユルールとボルドゥは、宋国の成都を目指して逃亡している。
成都
宋国の西端に位置する都市で、ユルール一行の目的地。西夏の首都・興慶からは南に1800里、ラクダの足で40日かかるとされている。
塩州
興慶より約80キロの地域。その名の通り塩を特産物とする地域で、塩田や塩湖が存在する。また、産出される塩を取引する隊商が市を作っており、ユルール一行とアルファルドはここで出会うこととなった。西夏が降伏したため、首都・興慶に近い塩州は大きな被害を受けないままモンゴル軍の支配下に入っている。
番大学院
西夏の首都・興慶に存在する施設で、西夏文字の資料を数多く収蔵する。いわば国立図書館。西夏文字の字典である玉音同はもともとここに収められていた。数十年のうちに西夏が滅びることを予期した番大学院長は、当時隆盛を誇っていたツォグ族に玉音同を持ち込むことを企図。娘を当時の族長に嫁がせ、その嫁入り道具の中に玉音同を隠し持たせた。
玉音堂
西夏の文字を記した、玉で出来た板。
西夏を忌み嫌うモンゴルの大ハンはこれを壊す事によって、西夏の文字全てを葬り去ろうとしており、また、ユルールはその大ハンに反抗してこの玉音同を守ることを決意した。
ユルールの旅の目的は、この玉音同をモンゴルの手の及ばぬ宋国まで送り届ける事。
金国
1115年から1234年に存在した女真族の王朝。
後にモンゴル帝国によって滅ぼされたが、作中時間内ではモンゴルとの戦闘が始まろうとしている状態。
宿駅
主要な街道に数十キロ間隔で作られた、モンゴル軍の駅伝の中継地点。
人や荷物を運搬する人馬を継立てる設備で、この宿駅が発展することで町となる事もあった。
番大学院
西夏の首都・興慶に存在する国立図書館。
西夏の文字を記した書物を多数保有する為、モンゴルの大ハンから焚書の命令を受けたが、これに番大学院はこれに抵抗。
ハラバル率いるモンゴル軍と戦闘を行う事になった。
宋国
960年から1279年に存在した中国の王朝。
後に北宋と南宋に別れる事となるが、シュトヘル内の時間軸では単一の国家として登場する。
『シュトヘル』の感想・評価
とても良い
クルクル さん(20代/女性/学生/独身)
名無し さん(20代/男性/正社員/独身)
ふう さん(30代/女性/無職/独身)
良い
りゅーや さん(20代/女性/パート・アルバイト/独身)
名無し さん(20代/女性/正社員/独身)
春の海 さん(30代/男性/経営者/既婚)
寛二 さん(20代/女性/正社員/独身)
ふつう
SSS さん(20代/女性/正社員/独身)
さとる さん(40代/男性/個人事業主/独身)
森田 さん(30代/男性/個人事業主/独身)
悪い
マガラブ さん(30代/女性/パート・アルバイト/独身)
シューク さん(40代/男性/正社員/独身)
kyuk さん(40代/女性/パート・アルバイト/独身)
【アンケート概要】
■調査地域:全国
■調査対象:年齢不問・男女
■調査期間:2018年10月04日~2018年10月12日
■有効回答数:100サンプル